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居室の規格が小さいわが国の住環境において、屋内外兼用で車椅子を使用する場合、そのサイズは屋内を基準として考えざるを得ない。特に手動式車椅子は、他に車への積み込みなどを含めた環境を反映して軽量化、小型化の歴史をたどって来た。
JOY−VANに使用している電動車椅子は、座席にスポーツ仕様のドライビングシートを装着している。これはヘッドレストの規制を突破するための苦肉の策でもあったのだが、結果として見た目にも実際にも大型となっている。日常生活の延長線上に『車』の利用があるとすれば、「普段使っている車椅子のまま乗り込んで運転したい」との要望が多いのも、当然のことと理解できる。
欧米では、普段使っている車椅子のまま乗り込み、ヘッドレストもなしで日常運転をしている。わが国でこのレベルの基準を作り出すためには、特例条項を設ける必要があると考えられるが、まだまだ多くの時間と労力を必要とするだろう。
?Eシートベルトが自分で固定できない
JOY−VANは初めて陸運局の認可を受ける都合上、シートベルトは従来の3点式をそのまま使用した。したがって車椅子を固定してからシートベルトをロックしなければならず、上肢に重度の障害を有する人には操作がきわめて困難か、全く出来ない状況にある。欧米では2点式シートベルトを常にロックした状態に張ってあり、車椅子を所定の位置に固定すると自然にベルトが斜めに体をサポートする位置にある。また横Gに対するサポートは車椅子の側に幅広のベルトを装着し、常に体幹を支持する。
頸髄損傷など、座位を保つことが困難な人たちは、運転中カーブにさしかかると、あらかじめ遠心力の働く方向とは逆の方向に体を移動したり、ハンドコントロールレバーやハンドルに体重を預けられる体勢を取ることで倒れ込みを防止している。これは3点式シートベルトが正常な運転座位を保つ上で役に立たないことを証明していることになる。高位頸損者になるとこのような準備態勢を取ることは不可能である。
したがって欧米では、張りっぱなしの2点式シートベルトに、前への飛び出しを防止する役割をあたえ、座位を保持する役割を車椅子のシートベルトに任せている。障害特性を考えればこの方が合理的であり、安全である。しかしながら残念なことに現在の我が国で公式には、3点式あるいは4点式のシートベルトで、ベルト着装確認表示ランプが義務づけられている。関東運輸局との交渉では、「本来の3点式ベルトを残した状態で、着装確認表示ランプが共用できれば補助ベルトとして認可できる。」との見解をいただいたが、全国レベルでの共通認識となるにはまだまだ時間がかかりそうである。製造年他いくつかの特例措置があるので、シートベルトに関しても特例条項に障害者対応の項目を書き込む方向への働きかけが必要である。

 

 

 

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